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JGB金利の上昇は米国債とTLTにどう影響する?

By Staff | 2025-12-11

Category: 米国債

日本の10年国債利回りは2025年12月時点で1.9%台に乗せ、長期的に見ても高水準となっています。

 

長く続いた超低金利環境から一転し、国内金利が上昇基調にあることは、国内債券だけでなく米国債や長期国債ETFであるTLTにも影響を与えています。

 

特に米国市場は利下げ観測と根強いインフレがせめぎ合う状況が続き、金利変動が読みづらい局面に入っています。

 

そのため、国内金利と海外金利の組み合わせで資金の流れがどう変化するのかを理解しておくことが大切です。

 


 

JGB金利が上昇すると米国債が売られやすくなる仕組み

 

金利上昇によって国内債券の魅力が高まると、海外債券に投じられていた資金が戻りやすくなります。

 

たとえば米10年債が4%台で推移していても、為替ヘッジを行うと利回りは1%前後まで低下することがあります。

 

一方でJGBが1.9%前後を提示しているのであれば、ヘッジコストや為替リスクを負担してまで米国債を保有するメリットは薄れてしまいます。

 

こうした状況では、

 

・米国債の需要が弱まり価格が下落しやすくなる
・利回りは上昇方向へ向かう
・TLTの基準価格にも下押し圧力がかかる

 

といった動きにつながりやすいです。

 

実際、2023〜2024年に米長期金利が5%付近まで上昇した際、TLTは約20%以上値下がりした時期がありました。

 

金利が高止まりする局面では、TLTの値動きはどうしても軟調になりやすい傾向があります。

 


 

円高と組み合わさることで起きる追加の影響

 

JGB金利が上昇すると、市場は日銀が引き締めへ向かう可能性を織り込み、円高方向に動きやすくなります。

 

円高が進むと、ドル建て資産の円換算リターンが縮小しやすくなり、TLTを保有していても実質的なリターンが伸びにくくなります。

 

つまり、

 

・JGB金利上昇
・米国債の調整
・円高進行

 

が同時に起きると、TLTのパフォーマンスには複合的な逆風となる可能性があります。

 


 

今後のシナリオ:注目すべき分岐点は「2%突破」

 

シナリオ1:JGBが2%を明確に突破し、2.2〜2.5%へ上昇する場合

 

この場合、国内債券が本格的に再評価され、海外債券からの資金回帰が起きやすくなります。

 

米長期金利は4.5〜5%台で高止まりする可能性があり、TLTの上値は重くなりがちです。

 

さらに円高が進めば、円建てのTLTリターンも抑えられる可能性があります。

 

シナリリオ2:JGBが1.8〜2.0%で安定する場合

 

現在のような水準で落ち着く場合、海外債券への大きな資金シフトは起きず、米国側の要因がTLTの値動きを左右しやすくなります。

 

米国でインフレが沈静化し、FRBの利下げ観測が強まると、TLTが回復しやすい展開も十分ありえます。

 

シナリオ3:JGB金利が1.5%付近まで低下する場合

 

経済の減速などで国内金利が低下すると、再び海外債券の利回りが魅力的に映りやすくなります。

 

円安が進む展開であれば、ドル建て資産のリターンも上昇しやすく、TLTには追い風となります。

 

長期投資の観点では、このシナリオが最もポジティブな結果につながりやすいです。

 


 

投資判断のために注目しておきたい指標

 

以下のポイントを継続的にチェックしておくことで、米国債やTLTの値動きが読みやすくなります。

 

・日銀の金融政策会合(利上げ姿勢や政策変更)
・JGB10年利回りのトレンド(2%を超えるかが焦点)
・米CPIや雇用統計、FOMCのスタンス
・ドル円相場の方向性

 

これらの組み合わせで資金の流れが変化するため、単体ではなく複数の指標をセットで見ることが大切です。

 


 

まとめ:金利環境の変化を冷静に把握することが重要です

 

国内金利の上昇は、海外債券とTLTの動きを考えるうえで欠かせない視点となっています。

 

JGBが2%台に乗るか、それとも現在の水準で安定するかによって、米国債市場の見通しは大きく変わります。

 

為替も含めた複合要因を意識しながら、冷静に市場環境を観察していくことが、長期的な資産形成にとって有効だといえます。

 

 

Tags: 米国債 TLT
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投資忍者 プロフィール

米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。

「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。

元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。