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全米株インデックスに含まれる中小型株の影響|S&P500とのリターン差を徹底解説

By Staff | 2025-10-15

Category: インデックス投資

VTI(バンガード・トータル・ストック・マーケットETF)は、米国株式市場全体をほぼカバーするETFです。


その連動指数であるCRSP US Total Market Indexは約4,000銘柄を含み、米国上場株式の時価総額のほぼ100%を網羅しています。

 

一方、S&P500は米国の代表的な大型株500銘柄で構成され、米国市場全体の約80%を占めると言われます。


つまり、VTIはS&P500よりも幅広く、中型株や小型株も含む「市場全体型インデックス」である点が最大の特徴です。

 

構成比率の目安は以下のとおりです。


・大型株:約80〜85%
・中型株:約10〜12%
・小型株:約5%前後

 

この中小型株の部分が、VTI特有の分散効果を生み出しています。

 


 

中小型株がリターンに与える影響

 

中小型株の長期パフォーマンスの実情

 

かつては「スモールキャップ・プレミアム(小型株優位)」という考え方がありましたが、近年の長期データでは明確な優位性は見られません。


代表的な小型株指数であるRussell 2000が設定された1984年以降を比較すると、


・S&P500の年率リターンはおよそ10〜11%
・Russell 2000の年率リターンはおよそ9〜10%


となっており、むしろS&P500が上回る結果です。

 

この背景には、大型ハイテク企業の成長が市場全体をけん引してきたことがあります。

 

Apple、Microsoft、NVIDIAなどの時価総額拡大により、S&P500のリターンが押し上げられた一方で、小型株はボラティリティの高さから相対的に劣後する期間が続いています。

 

 

VTIにおける中小型株の役割

 

それでも、中小型株を含むことは「分散の質」を高める重要な要素です。


景気回復初期や金利低下局面では中小型株がリーダーとなりやすく、そのタイミングではVTIがS&P500を上回ることもあります。

 

たとえば、


・2013〜2016年の米国景気回復期には、中小型株が堅調に推移し、VTIがS&P500を年率で約1%前後上回った。
・2020年のパンデミック後の回復初期には、小型株が急反発し、VTIが短期間ながらS&P500を上回る局面もあった。

 

ただし、その後2021年以降は大型ハイテク株が主導し、再びS&P500がリード。


長期的には両者の差はごく小さく、VTIの中小型株部分は「リターンを大きく引き上げる」よりも「市場の広がりをカバーする」役割を果たしていると考えられます。

 


 

リスク面の違いと分散効果

 

VTIは中小型株を含むため、一見リスクが高そうに見えますが、実際には分散による安定性が期待できます。

 

中小型株には以下のような特徴があります。


・景気や金利動向に敏感で、短期的な値動きが大きい
・個別企業の業績変動が大きく、倒産リスクも相対的に高い
・一方で、成長局面では市場全体の活力を反映しやすい

 

 

VTIのように数千銘柄をまとめて保有するインデックスを通じて投資することで、これらの個別リスクが希薄化され、「市場全体の平均的なリターン」を安定して取り込むことができる構造になります。


つまり、リスクを抑えながら米国経済の全体成長を享受できるのがVTIの強みです。

 


 

VTIとS&P500の過去リターン比較

 

VTI(ETF)は2001年に設定されましたが、同タイプの全米株指数(CRSP US Total Market Indexや旧Wilshire 5000など)は1980年代以降のデータを持ちます。


この指数を用いてS&P500と比較すると、長期的なリターンは非常に近い水準で推移しています。

 

ただし、直近10〜15年ではS&P500が明確に上回る傾向があります。


これは、S&P500の構成銘柄上位を占めるApple、Microsoft、NVIDIA、Amazon、Alphabetなどの超大型テクノロジー株が、指数全体の上昇を主導したためです。


一方で、VTIに含まれる中小型株はこの期間のリターンが伸び悩み、全体の平均リターンをやや押し下げました。

 

参考データとして、


・1984〜2024年(指数ベース)
 S&P500:年率約10.9%
 全米株指数:年率約10.6%

 

・直近10年(2014〜2024年)
 S&P500:年率約11.6%
 VTI:約11.0%

 

となっており、長期ではほぼ同等だが、近年はS&P500が優位という状況です。


これは、時価総額上位企業の集中度が高まっている現代の市場構造を反映しています。

 

将来的にこの偏りが緩和され、景気循環の局面が変化すれば、VTIが相対的に優位に立つ可能性もあります。

 


 

投資戦略としての考え方

 

VTIを選ぶメリット

 

・米国市場全体に投資でき、分散効果が高い
・中小型株の成長機会を自動的に取り込める
・セクターや企業規模の偏りを抑えられる
・リバランス不要で長期保有に適している

 

つまり、VTIは「米国経済の総合的な成長を取り込みたい」投資家にとって、シンプルかつ合理的な選択肢と言えます。

 

S&P500との使い分け

 

・より安定した値動きと低ボラティリティを重視するならS&P500(VOO)
・より広い分散と将来の中小型株リバウンドを期待するならVTI

 

どちらも低コストで長期投資に向いており、組み合わせて運用することも可能です。


VTIをベースにS&P500を一部加えることで、安定性と成長性のバランスを取る戦略も考えられます。

 


 

まとめ|「分散」こそ全米株インデックスの真価

 

過去40年のデータで見ると、S&P500の方がわずかに高いリターンを示してきました。


しかし、VTIの価値は単なるリターンの比較だけでは語れません。

 

中小型株を含むことで、VTIは米国経済のあらゆる層をカバーし、特定の大型株に依存しない「市場全体への投資」を実現しています。


この構造こそが、短期的なパフォーマンス差を超えた長期分散の強みです。

 

S&P500とVTIのどちらを選ぶかは、より安定を重視するか、それとも市場全体へのエクスポージャーを取るかという投資方針の違いによって変わります。


どちらも米国市場の成長を取り込む優れた手段であり、最終的には自分のリスク許容度と投資目的に合った選択をすることが大切です。

 

VTIの構造や分散効果をさらに深く理解したい方は、全米株ETFの基本から投資戦略までを解説した「VTI徹底解説|全米株ETFの特徴・リターン・投資戦略」をあわせて読むと、VTIの位置づけをより立体的に把握できるでしょう。

 

 


 

FAQ

 

Q1:長期的にはVTIとS&P500、どちらが高いリターンですか?


1984年以降の指数ベースではS&P500がわずかに上回っていますが、その差はごく小さく、いずれも米国市場全体の成長を反映しています。

 

Q2:VTIの方がボラティリティが高いのはなぜですか?


中小型株を含むため、短期的な値動きがやや大きくなる傾向があります。

 

Q3:VTIとS&P500を両方持つ意味はありますか?


重複はありますが、VTIを軸にS&P500を補完することで、分散性と安定性をバランス良く組み合わせられます。

 

Q4:最近S&P500が優位な理由は?


AppleやNVIDIAなどの超大型ハイテク株が指数を強く押し上げているためです。これが今後も続くかは、市場環境次第です。

 

 

Tags: インデックス投資

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投資忍者 プロフィール

米国株の投資情報、個人投資家向けの投資戦略、米国株式投資関連情報などを配信しています。

「企業の業績と株価は長期的に統一する」という考えで、米国株の長期的投資をしています。オプション取引では短期的には市場はランダムに動くと考えて取引しています。

元米国不動産アナリスト。米国MBA保有。海外生活約25年。個人投資家兼オプショントレーダー。